研究内容
私達は、”光”そのものを制御して、それによって生み出される新しい特性を用いた各種応用研究を進めています。特に、光ビーム断面における光の強度や偏光、振幅といった基本的なパラメータの空間分布に興味があり、このような光を積極的に利用した高性能光イメージング技術、レーザー微細加工技術、物質との相互作用に関する研究に取り組んでいます。
01
空間構造を持つ光の発生と新規特性
NOVEL FEATURES of structured light beams
光の強度(振幅)や位相、偏光は光波を特徴づける基本的な性質です。通常、このような性質はビーム断面では一様な分布であることがほとんどですが、その分布を空間的にデザインすると、従来には得られなかったような新しい特性を生み出せることが分かってきました。このような光ビームは、Structured light beam (空間構造を持つ光)とも呼ばれていますが、その特性や応用可能性については明らかになっていないことがまだまだ多くあります。
径偏光(ラジアル偏光)や方位偏光(アジマス偏光)などのベクトルビームや、螺旋波面を持つ光渦ビーム(ボルテックスビーム)などは空間構造を持つ光の一種です。このような光ビームを生み出すレーザー光源開発、微小集光スポット特性などの集光特性の解明、イメージング・レーザー加工などの応用展開を広く進めています。
参考文献
多様な分布を持つ光波を駆使した応用研究を進めています
02
高性能レーザー顕微鏡
Advanced laser microscopy
レーザー光を照明光として用いるレーザー走査型顕微鏡法は、生命科学・材料科学だけでなく産業分野でも必要不可欠な光学観察法の一つです。現在、光波の空間構造制御を原理としたレーザー顕微鏡の高性能化を目指した研究を推進しています。
これまで、ベクトルビームが持つ微小集光スポット特性を駆使した超解像蛍光イメージングを実現し、可視光の光の集光のみ100 nmに迫る空間分解能を実証しました。
また、ベッセルビームやエアリービームの特性、あるいは計算機合成ホログラムといった光技術を駆使して励起レーザー光の1回の2次元走査のみから3次元画像を瞬時に取得する本研究独自の高速な3次元光イメージング技術(ニードル顕微鏡法)の開発にも取り組んでいます。
さらに、生命科学分野の研究グループとの積極的な共同研究を通じて、生体ナノイメージング法の開発も精力的に進めています。
参考文献
ベクトルビームが持つスーパーオシレーション集光による超解像イメージング(上部)や、針状の集光スポット(ニードルスポット)を用いた3次元高速イメージング法を開発しています
03
レーザー微細加工技術
Laser micro/nano processing
フェムト秒パルスレーザーを用いたレーザー微細加工技術において、集光する光ビームの焦点近傍での強度分布や偏光分布を制御することによるレーザー加工法のさらなる高空間分解能化・高精度化、あるいは高機能化を目指しています。
現在、強く集光したベクトルビーム(径偏光ビーム)を用いたナノ加工の実現、グラフェンを始めとした非常に薄い膜などに対する干渉縞加工技術の開発、表面周期微細構造などに関する研究を精力的に進めています。
参考文献
光の偏光分布を高度に制御すると、レーザー波長の1/10以下のスケールでの超微細加工が実現できることを実証しました
04
レーザー光と電子の相互作用
Interaction between laser and electron
一般に光と自由電子の散乱はトムソン断面積で決まる反応確率の小さな現象ですが、誘導効果を利用することで効率的に散乱が生じ、実用的な応用展開が期待できます。この研究ではレーザー光を使った電子顕微鏡用素子の開発に取り組み、光と自由電子の誘導散乱課程を利用した全く新しい電子光学・光科学技術の創出を目指しています。
参考文献
レーザー光を用いて電子ビームの伝搬や空間分布を制御する全く新しい方法論の開発を進めています